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ちょっと気になる健康問題 ~第2回~

「健康寿命は骨に聞け!」~骨粗鬆症について

 

 高齢化社会を迎え健康寿命の維持、すなわち歳をとっても元気に体を動かし、いきいきとした生活を送ることを誰しも望むようになりました。しかし、 せっかく長生きをしても、自立生活能力の低下から介護が必要な人が増えているのも事実です。寝たきりの原因には脳卒中や老年症候群が最も関与しています が、骨粗鬆症による骨折も大きな比重を占めています。骨強度を規定する骨密度と骨質に影響を及ぼすさまざまな因子がいずれも加齢に伴って悪化することによ り骨粗鬆症は発症しますが、WHO(世界保健機関)によれば「低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴とし、骨の脆弱性が増大し、骨折の危険性が増大する疾 患」と定義されています。わかりやすく言いかえると、カルシウム摂取不良、運動不足、身体の老化による骨形成ホルモンの低下や薬物の副作用等により骨の量 が減ってスカスカになり、骨折を起こしやすくなっている状態、もしくは骨折を起こしてしまった状態が骨粗鬆症と考えられています。日本においては人口の急 速な高齢化に伴い骨粗鬆症の患者が年々増加しつつあり、その数は現時点では1200万人以上と推測されていて、男女比はだいたい1:3.2という統計が示 されています。骨粗鬆症では錐体、前腕骨、大腿骨近位部などの骨折が生じやすく、日常生活動作能力の低下をもたらして健康寿命を脅かす重大な要因の一つと なっています。なかでも、大腿骨近位部骨折は単に移動能力や生活機能を低下させるだけではなく、死亡リスクを有意に上昇させる、すなわち生命予後と直結し た骨折であることが多くの研究から明らかにされています。以上のような状況から、骨折の有無にかかわらず、骨粗鬆症対策が医療のみならず社会的にも今日と ても重要な課題となっていることが理解されます。

 

 

 診断においては、身体の理学所見(身長短縮、亀背や歯数減少など)をもとに、椎体のX線写真、MRI(核磁気共鳴画像法)などが従来行わ れてきましたが、骨塩分析装置である二重エネルギーX線吸収測定法等による骨密度評価や骨代謝マーカー測定の普及により、骨代謝の状態がいっそう客観的に 評価できるようになりました。また、特別な問診票による簡易診断も行われています。

 

 

 骨粗鬆症の予防において重要なことは、まず第一に、成長期における骨量を十分に増加させて高い骨量頂値を獲得することとされています。ま た、女性においては閉経後急速に骨量が減少するので、閉経後の急速な骨量減少者を早期にスクリーニングし、骨量のさらなる減少をくい止めることが求められ ます。骨量がすでに著しく低下している高齢者においては、骨量の維持とともに転倒の防止が最重要です。予防のためには日常食習慣の適正化(カルシウム、カ ルシウム吸収を助けるビタミンDの適正摂取など)、継続的な運動習慣およびビタミンD吸収促進のための日光浴などが奨められています。骨粗鬆症の治療は、 早期介入により骨折危険性を抑制し、生活上における身体的かつ肉体的水準の維持改善を図ることが原則です。現在多種多様な治療薬が使われていますが、骨の 吸収(骨が溶ける)を抑えるもの、骨の形成を助けるもの、吸収と形成の骨代謝を調節するものの三つに大別できます。

 

 

 骨粗鬆症は生活習慣病といってもよく、これを予防・治療することは他の生活習慣病を予防することにもなり、健康寿命を維持するために必要不可欠な要素です。このような観点から、皆さんもご自身の生活を見直し、積極的に専門医療機関を受診されることをおすすめします。

 

 

 

2016年2月14日
院長 金 秀樹