熱中症
熱中症とは、暑熱環境すなわち高温多湿な環境下において、体内の水分および塩分(ナトリウム等)のバランスが崩れる、体温の調節機能が破たんするなどして発症する身体障害のことをさします。
<熱中症の発生時期と環境要因>
発生月は7~8月が最も多く、この2か月間で全体の約80%を占めますが、気候変化が激しくて、暑さになれていない6月中から発生がみられるので油断しないようにしなければなりません。学校などでは屋外活動時に多く起こりますが、一般職場における時間帯別では14時~16時台が最も多く、日中の作業終了後に帰宅してから体調の異変を感じることもあります。また、全体の5割弱が熱に暴露する運動や作業の開始から7日以内に発生し、身体が熱に慣れていない時期に起こりやすいのでとくに注意が必要です。予防のためには、気温・湿度変化に対する順化期間(それらに慣れる期間)を十分にとることが重要です。
<熱中症の予防>
熱中症の予防の基本は上手に汗をかき、効率よく水分を補うこと、そして、がんばりすぎないことです。
- 汗で流れ出る水分と塩分を早めに少しずつ補給する。水500mlに対して塩0.5~1gを溶かしたもの、あるいは水を飲みながら梅干しや塩飴でもよい。
- 体調がなんともないときから涼しいところで早めに休息を取る。
- 吸汗性のある素材の衣服や帽子を着用する。とくに汗が出ても乾きやすい素材のものがよく、明るい色調の衣服を選ぶ。
<熱中症の症状と分類>
Ⅰ度(熱けいれん、熱失神):通常は現場での応急処置により回復可能
- めまい、失神(立ちくらみを含む)
- 筋肉痛、筋肉の硬直・こわばり(こむらがえり)
- 大量の発汗
Ⅱ度(熱疲労):医療機関への搬送を考慮
- 頭痛、気分不快、吐き気、嘔吐、倦怠感、虚脱感(体がぐったりする、力が入らない)
Ⅲ度(熱射病):内臓機能障害を生じており、中枢神経症状を示すもので、すぐに入院加療が必要
- 意識障害、けいれん、手足の運動障害(呼びかけや刺激に反応が鈍い、体ががくがくしている、まっすぐに歩けない等)
- 高体温(体に触れると明らかに熱い)
<熱中症が疑われる人への対応>
意識がある場合
涼しい場所に移動させ、衣服をゆるめ、身体を冷却しつつ、水分を摂取させる。ただし、意識があっても返答がおかしい、あるいは水分を摂取できない場合は、そのままでは回復が見込めないことが多いので、医療機関を受診させる。症状が改善しても、しばらくの間はその場で経過を観察する。
意識がはっきりしない場合
すぐに救急車を要請する。救急車が来るまでの間、涼しい環境へ運び出し、衣服をゆるめ、身体を冷やす。
嘔吐、誤飲の危険があるので、無理に水分を飲ませようとしない。
<身体の冷却法>
保冷剤や氷をタオルに包み、額・首・わきの下・足の付け根にあてる。
濡れタオルやハンカチを体にのせ、うちわであおぐ。